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「株の乱高下は何をもたらすか?」

二十数年ぶりに株価が7000円台にまで下がった。日本のバブルがはじけたのと同じ状況が世界的に起こったのである。日本のダウ平均で言えば、500円以上の乱高下は1年に数回しかない。それが最近では1ヶ月に数回も起こっている。この状況は今後も続くに違いない。

当時のことを鮮明に覚えている。はじける直前までは、喫茶店でも主婦が盛んに株の話をしていた。「あの株がいい」「いやこの株がいい」とか「何十万円儲かった」など景気のいい話で持ちきりであった。ところが、はじけた後、彼らは株の話をまったくしなくなったのである。

しかし、当時株の取り扱いは証券会社に限られており、株の売買する人は限られていて、その影響を受ける人は、現在と比べると極めて少なかったように思う。

ところが、銀行が株の取り扱いを始め、その上郵政の民営化によって、普段接する身近な銀行員、親しいかつての郵便屋さんが株を勧めることになった。そのため、株価の暴落の影響を受けた人は、バブルのときと比較にならないほど増えているのではないか?

さらに悪いことには、団塊の世代の定年退職に伴う退職金が狙われて、その一部あるいは全部を株に投入した人もマスコミ報道によれば多数いるという。

一攫千金を狙うにはインターネット関連か株式投機、芸能関係しかないー私も以前このコラムで書いたことがある。実際問題として、真面目にコツコツ働いていても「わが暮らし楽にならざり」である。企業は空前の利益を上げても労働分配率は下がり、さらに終身雇用は崩壊して「明日無き」生活がある。

老後に待っているのは、年金の支給年齢の上昇と逆にその支給額の減少など、不安な状況がある。それをカバーするためにと彼らの勧めで購入した高齢者もいるに違いない。「あの人たちの言うことだから間違いない!」と信じて…。

そもそも株を買うことを投資するという。しかし、現実の株の売買は1分1秒を争い、1円、2円の株価の上下に一喜一憂している。これは投資ではなく投機である。極限すれば「投資という名の博打」である。

この会社に頑張って欲しい、と思う会社の株を購入して応援するのが本来の投資である。しかし、現状は本来の目的から遠く離れ、濡れ手に粟を目論んでいる。こういう表現をすれば実もふたもないが、上がれば下がり、下がれば上がるのが株価である。

確か経済学者のガルブレイスが指摘している「人は株価の暴落によって手痛い目に合うが、また忘れて手を出す」はまさに至言である。

特に今回の株価の暴落は、熊本県で始まった「ネズミ講」を思い浮かべる。ネズミ講が破綻したあと、それを検証するTV番組の「まともに働くことをやめて、全員がこんなことをしていたら、本当に生きていけるのだろうかと思った」―主婦の言葉が妙に頭に残っている。

金融とは本来経済の補助的役割である。それが実体経済を上回り、逆に実体経済を苦境に陥れる結果を生んでいる。報道によれば、サブプライムローンの問題は実態を把握しきれないほどもっと根が深いという。

私は、自分の小遣いで株を買うことを若い先生方に勧めている。「儲けようと思うな、専門学校に通ってもお金はかかる。専門学校に勉強代を払ったつもりで株を買えばいい経済の勉強になる」と…。

若い人に言うだけでなく、経済の勉強をするために、私も10月初旬に株をほんの少しだけ購入した。これから起きるであろう株価の乱高下で、しっかり生きた勉強をするつもりである。

2008年11月


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