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  「ブサアホの相棒」         バックナンバー

 私にはかけがいのない相棒がいる。出張から帰っても特に愛想が良いわけではなく、ジロリと一瞥するだけ。それからおもむろに近寄って来て、私の座っているソファの横に座りたがる。それから居心地の良い体制を探し、目をつむりウトウトし始める。まったくのマイペースである。

 
私がトイレに行っても知らんぷりで、何事も無かったように寝ているだけ。ところが、同じように妻がトイレに行くと、ウウン、ウウンとドアまで行って帰りを促す。一体全体この差は何だろう。

 
まったくのマイペース。普段は私にまるで素っ気ないが、目を輝かせるときがある。それは私が食事をしたり、何か食べているときである。目が爛々と輝き、おこぼれを必死に求める。それは私に対してだけではない。もちろん、妻の時も同じ反応である。

 
何しろ食べ物には異常な反応を示す。喰い気たるや半端ではない。テーブルの上に残っている汁気でも必死で舐める。困ったことにはティッシュさえも食べたがる。一体どんな味覚と嗅覚をしているのだろう。

 
我が相棒との出会いは今から12,3年前に遡る。前の相棒が無くなって、妻が泣いてばかりいた。同じような可愛いシーズー犬はいないかと、たまたま訪れたペットショップで出会ったのである。

 
生まれて1ヶ月くらいの片方の手のひらに乗る小さくて可愛いシーズー犬がいた。その犬が私に向かって後ろ足で立って、おいでおいでのポーズを取ったのである。これは後で分かったことだが、奇跡であった。

 亡くなったシーズー犬は生まれつき心臓が悪かったので、抱っこして心臓の音だけは確認した。そのとき、ブルブル震えていた。赤ちゃんのワンコは抱っこされると普通喜ぶものだ。しかし、その時私は何とも思わなかった。

 すぐに連れて家に帰ったが、エサを食べられない赤ちゃんだったので、牛乳を与えたり、しばらく遊んだりした。しかし、仕事に行かなければならないので、妻に子犬を買ったことだけをメールで伝えておいた。

 
妻が仕事から帰ってワンコを呼ぶと、片隅に置いていたテーブルの下に潜り込んで出てこない。手を入れて引っ張り出そうとすると、「ウウー」と吠える。普通子犬は相手が誰でも喜んで近づくものだ。妻は怖がって、私が帰るまでそのままにしておいた。

 
私が帰宅して呼びかけると、喜んでテーブルの下から這い出て来た。前述のように後で分かったことだが、大変な「恐れ」で、人も犬も恐れる犬だったのである。ペットショップで私に「おいでおいで」したのはまさに奇跡としか言いようがなかった。

 
人と人に相性があるように、人と犬とも相性があるのではないか。私と彼とは抜群に相性が良かったのであろうか?飼った当初はずっと私に付きまとったものだ。ところが、その彼が今や妻の後をずっと追っている。何故なんだ!

 
寝るときには私の顔の横に寝て、私が寝がえりを打つと、常に私の顔が向いている方に移動したものだ。しかし、今では妻にぴったりと寄り添い寝ている。一体全体、彼の中でどういう気持ちの変化が起きたのだろう?不思議でならない。

 
あの可愛かった彼も今や「ブサアホ」。年を取るのが人の数倍の速さ。彼も今や立派なおじさんの年齢のはず。いつまで彼とこの世で一緒に生きていけるのだろう?私のかけがいのない相棒よ。


2015年03月