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 第306回(03月号)             BackNumberは こちら

 周りの茶坊主のゴマすりで裸の王様になった若者である新役員はどんどん調子に乗ったのじゃ。そしてこともあろうに社長より自分の方がエライと錯覚をし始めたのじゃ。人柄のいい社長はそれとなく感じておったようじゃが、「まさか!」と言う気持ちの方が強かったのじゃろう。新役員を毛嫌いすることもなく、今までとまったく変わらず接しておったのじゃ。ますます図に乗った新役員は組織委員会を立ち上げて、己が実質的に全面的に実権を握る組織を作ろうとした。そのためには組織委員会のプロジェクトチームに、己の息のかかった者を登用し、己の意のままに組織を作り上げようとしたのじゃ。


 第305回(02月号)             BackNumberは こちら

 着実に周りを固めて行った若者は部長になり、さらに若くして役員に登用されたのじゃ。己の力を過信した彼は、調子に乗って得意先だけでなく銀行に対してまでも横柄な態度を取るようになっとと聞いておる。それでも大企業と言うバックボーンの前に表向きは彼の横暴に異を唱えることはなかった。するとそれを見て、役員になった若者に媚をうるものが増えて行ったのじゃ。それがさらに新役員の若者をさらに増長させるというスパイラル-負のスパイラルといったのが適切じゃろうかのう-に陥る結果となったようじゃ。彼を諫めるものがおれば、少しは違ったと思うが、周りは茶坊主だらけになったのじゃ。よくあるパターではあるがのう。

 第304回(01月号)             BackNumberは こちら

 それは見事なものじゃった。もともと新社長が常務時代に部下だった彼は、今までよりさらに距離を縮めながら懐に飛び込んで行ったのじゃ。人のいいい社長は彼の思惑に気づかずに若者をかわいがった。若者は部長に昇進し、さらに役員まで抜擢された。舞い上がった若者はその昇進が己の実力と錯覚したのだろう、社内だけでなく対外的にも態度を変えて調子に乗って行ったのじゃ。社内的にはその若者に媚を売るものが増えた。なぜなら、彼がかわいがった者を新社長に進言してポストにつけたからのう。まさに飛ぶ鳥も落とす勢いを得た若者-といってもすでに45歳をすぎておったがのう。

 第303回(12月号)             BackNumberは こちら

 特別なシステムの構築がなくても、新社長は悠然としておった。なぜなら彼の地位を脅かせる存在が当面なかったからじゃ。じゃがのう、のほほんとしておったら企業と企業との戦争には勝てん。社員のなかから「これで良いのか?」という疑問の声が上がり始めたのじゃ。しっかし、それはまるで線香花火のようなもので、大きく広がることはなかった。それも当然じゃろう、大株主の社長に対して、たんなる社員では勝ち目がないからのう。誰もが葛藤を心の隅にかかえながら進んでおった。そのほころびが少しずつ表れてきつつあるときに、前社長に気に入られていた若者が新社長との距離を縮めながら頭角を現し始めた。

 第302回(11月号)             BackNumberは こちら

 新しく独自の路線を打つ出そうと苦心したが、何も目新しい路線は打ち出せなかった。新規顧客の開拓と既存の顧客への売り上げのアップそして経費の削減がその骨組みとでも言える政策だった。誰が考えても当たり前で、それを実行するための具体的な取り組みの方針が必要である。じゃがのう、まるで絵にかいた餅で、実行するためのサブシステムがなかった。いわば掛け声だけ、極言すれば願望を方針としたようなものだった。例えば経費の削減で言えば、人件費を削ることが大きなポイントになる。しかし、単に首を切れば業務が回らず、逆に顧客を失うことになる。つまりじゃ、少ない人数で回る仕組みの構築があるべきはずじゃ。

 第302回(10月号)             BackNumberは こちら

 悲しいことじゃのう、会社を創業し拡大し、そのために周りの者たちは恩恵を受けて今日の存在がある。それらをすべて忘れて、己の現在の利のみを求めていた。早かれ遅かれいずれ社長は自分の手に入るのに、その時期を早くしたいだけの欲求で動いておったのじゃ。特別な能力もなく社長についていっただけで現在の地位を得た重役とその子供たちも、次を虎視眈々と狙う専務に付いて行った。結果はお主らの想像通りに専務の社長になる時期が早まった。新社長となった専務は当初は有頂天であったが、その責任の大きさと己の能力を次第に知ることになる。特に経営方針についてそれが顕著に表れた。

 第301回(09月号)             BackNumberは こちら

 元気な会長とはいっても、寄る年波には勝てんものじゃ。さすがに衰えが目立つようになった。彼にひたすらついてきただけで役員に取り立ててもらっておった者たちも一人、二人と順に息子にその地位を譲っていった。跡取りと考えておった娘婿は追いやられたために 、会長には跡取りがいなかった。現社長は会長を追い出す機会を狙っておった。会長が少し長期の休みを取らなければならない病気になる機会を伺っておったのじゃ。悲しいことよのう。会長のお陰で会社が拡大し、子会社、孫会社を加えると大きなグループにまでなっており、それをそのまま受け継いでトップにまでのぼりつめることが可能な期を伺っていたのじゃ…。

 第300回(6月号)             BackNumberは こちら

 現社長は会長の体力が衰えるのを待つしかなかった。まっこと悲しいことじゃのう。会社を大きくしてもらい、さらにその会社の社長までなれたのは会長がいたからに他ならん。激動の時代に時代の趨勢を読むことができたのは、会長しかいなかった。実際、子会社の出店の場所を決めるとき、当時の社長の案にはすべての役員が反対しておったが、社長の鶴の一声で決定をした。その後、競合他社が他の役員が推す場所に出店したところ短期間で徹底を余儀なくされたと聞いておる。かように現会長の経営感覚、換言すれば経営の嗅覚は、他者を圧倒しておったのじゃ。その会長の長寿を願うのではなく衰えを待つとは!

 第299回(5月号)             BackNumberは こちら

 これも創業者ではない2世が会社を継いだ時、常にまとう宿命とでも言うべきじゃろうのう。小さな飲食店を継いだ時でも「前と比べて味が落ちた」と言われる宿命のようじゃ。実際は味がまったく同じでも言われると聞いておる。これをカバーするには先代が経営をしているときから、「ワシより息子の方が料理が上なので、今もすでに息子が中心に料理をしている」とフォローするのが最も効果的じゃろうと思うぞ。実際、陳健一氏はずっとそれをお客さんに言っておったと聞いておる。さすがという他はない。しっかし、今回の場合は常務であって現社長が、先代を追い込んで会長にまつり上げたのじゃから、うまくいかないのが当たり前じゃった。

 第298回(4月号)             BackNumberは こちら

 前にも書いたように、会長は閑になったことを幸いに、各店舗を回ってはそれぞれの問題点を指摘した。いかに社長を退いているとはいっても、従業員はそれを快くは思わなかったのは当然じゃろう。それを社長に告げ口をしたのじゃ。じゃがのう、社長で最終的には全権限を持っているとはいっても、つい最近までは顎で使われておる関係じゃったので、会長には「うろちょろするのを止めてくれ」とは決して言えなかった。今までの関係だけでなく、会長の指摘はまさに的を得ておったきに、言えば逆に己の能力のなさをしてきされかねんからのう。従業員と会長との板挟みで社長は苦しんでおったときく。

 第297回(3月号)             BackNumberは こちら

 新社長は温厚な人柄ではあったが、企業運営に関してのヒラメキはなかった。企業を運営するには理論を学ぶことは重要じゃが、それだけでは決して企業は成長でけんものなのじゃ。これは伝説になっておるが、あの経営の神様に新入社員がマーケッティングをとうとうと語った。それを聞いた松下幸之助は「あんじょう商いをすることでんな」と一蹴したという。彼の経営についてのヒラメキが、小さな町工場からパナソニックを作り上げたと言っても過言ではないじゃろう。新社長へ言いたいことはあったと思うが、会長はさすがにそれは遠慮しておったと聞いておる。何とも切ないのう。

 第296回(2月号)             BackNumberは こちら

 会長は周りが自分をどのように見ておるのか、まったく気づいてはいなかったのじゃ。むしろ、企業にとって重要なことを従業員に浸透させようという気が強かったのじゃろう。自分では正義のつもりでも、見方によってはまるでドン・キホーテのようじゃった。彼が自分の考える企業の在り方を、従業員に浸透させようとすればするほど、多くの従業員から遠ざけられるという自己矛盾に陥ったのじゃ。新しく社長になった者も決して会社を愛していなかったというわけではない。むしろ、新しい企業の在り方を必死に模索しておった。じゃがのう、会長と新社長ではもって生まれた素質が明らかに違っておった。

 第295回(1月号)             BackNumberは こちら

 会長はもちろん会長室だけでなく会長専用の乗用車もあった。そのため会長は時間の余裕を利用しては、多くの支店への見回りを始めたのじゃ。自分の創業した会社を愛しておるゆえの行動と言えるじゃろう。しっかし、これを繰り返しやられた現場はたまったものじゃない。現場の従業員からみれば、暇人が忙しい現場を見回ってはアレやコレのけちをつけるような感覚じゃったろう。現場からすれば老害以外の何物でもない。まっこと立場の違いはどうにも埋めがたい距離があるのもなのじゃきに。しっかし、以前ほどの権力を失ったとはいっても、一人や二人の左遷の人事異動などの力は十分にもっておるゆえ、現場は右往左往せざるをえなかった。

 第294回(12月号)             BackNumberは こちら

 社長と会長ではその忙しさが全然違う。会長とは一般的に名前だけでお飾りに近い物じゃきに。しっかし、会長はじっとしてはおれぬ性格じゃった。しかも、単なるお飾りとの自覚もない。そのため社内的には、己が今でも中心のような振る舞いを続けておったのじゃ。それでは新社長は面白くはない。そのため彼は労働組合をうまく利用しようと考えたのじゃ。お主らも知っておるように、経営者と徹底的に戦う組合は過去の話になっておる。どの会社もまるで経営者と一体のような観を示して居る。産業別組合でないので、過激になれば企業そのものの存続が危うくなるご時世なので、そういう時代背景では致し方のない面があるかもしれんのう。

 第293回(11月号)             BackNumberは こちら

 会長になった元社長は創業者ゆえに会社を愛していた。会社は彼の人生そのものであった。新社長は元常務の息子で、会社を愛してはいるが、元社長との愛すレベルが違うように感じられた。元社長は支店に突如現れては、目につくことを従業員に指摘して回った。彼の会社への愛がそうさせているようだった。しっかし、社員にしてみれば、忙しいときに来ては説教をする会長にうんざりしているようじゃった。今でいう「老害」に感じていたのじゃろう。会長はこうしてどんどん社員からも嫌われていったのじゃ。じゃが、そのことにまったくま気づかないのは会長だけじゃった。こういうのを世の中で何というんじゃろうか?

 第292回(10月号)             BackNumberは こちら

 ワンマン社長ゆえに大きく伸びるときはそれがプラスに働くが、何か問題があったときには従業員の不満が爆発する。それはそのとき一時の感情ではない。いままで溜まり溜まった憤りが一気に出るのじゃ。国の運営でも同じことじゃ。強力でどうにもならないほどの権力者でもあっけなく倒されることがあるのは、お主らも歴史で知っておる通りじゃ。常務もこのチャンスを逃さなかった。彼自身も社長に対して鬱積した思いがあったのじゃろうのう。社長はこの事件によって社長を追われることになる。一応会長という地位にはついたが、実権のあるものではなかった。常務が社長につくことによって、実権が新社長に移ったのじゃ。

 第291回(09月号)             BackNumberは こちら

 何と常務は社長の責任追及をしたのじゃ。形式的に己の決定したことを追認するだけだと高をくくっていたっ社長にとっては、それはまさしく青天の霹靂そのものじゃった。それだけではない。自分についてくるだけで特別な能力もない役員の多くが常務についたのじゃ。社長にとっては想像外じゃった。己の力で会社を大きくしたと自負していおる社長には、他の役員の気持ちの機微が理解でけんかったのじゃろう。次の時代を担う常務につくという面もあるが、彼らが常務側につく理由はそれだけではなかった。時、場所も憚らず今まで社長に怒鳴りあげられなかった役員は皆無であった。彼らの記憶にはそれが強く残っていたのだ。

 第290回(08月号)             BackNumberは こちら

 今まで社長に異を唱えることをまったくしなかった役員たちの何人かが常務に従ったのじゃ。社長にとっては青天の霹靂であった。役員たちはいずれ長くない社長の交代を見込んだ立ち振る舞いであった。圧倒的に強かった社長も常務の意見を取り入れざるを得なかった。そこで役員会を再度開いて、社長の決定を審議し直す形をとったのじゃ。ワンマンにふるまっておった社長にしてみれば、まさに断腸の思いの再審議であった。この役員会で思わぬ方向に結論は向っていったのじゃ。まさに想定外の出来事が起こったのじゃ。何度もチャンスはないと踏んだ常務が乾坤一擲の勝負をしかけたのじゃ。

 第289回(07月号)             BackNumberは こちら

 社長と対等ではないが、社長に対抗でける者は専務・常務しかおらん。彼らは社長より20歳くらい若い常務をたきつけた。社長を狙っておった常務にとってそれは渡りに船じゃった。いつもでも常務でおることに納得でけんかった彼は、若者の陰謀を知りながら話に乗ったのじゃ。企業の決断が迫られるある事件があった。社長は役員会の了承を得ず、いつものように独自の判断でことを進めようとした。いつもなら普通のことであったが、この機会を常務はうまく利用した。役員会で計ってないことの責任を追及したのじゃ。現社長も遠からず引退すると読んでいた他の役員たちは、次の社長になるであろう常務に同調したのじゃ。

 第288回(06月号)             BackNumberは こちら

 若者たちの野望は着実に実現する方向に進んでいた。いつの時代でもそうなのじゃが、どんなに能力があっても老化はどうにもならん。徳川氏が天下をとったのも、いろんな理由はあるじゃろうが、武田信玄などの有力大名と比べて、彼が長生きをしたというのも大きな理由のひとつじゃろう。あの能力がありワンマンな社長も寄る年波のせいもあり、着実にカリスマ性を失っていったのじゃ。しっかし、彼の目の黒いうちはさすがに部長となっておった若者たちも手がでなかった。万一、手を出せば一発で彼らはぶっ飛ばされていただろう。それ程社長は強かったのじゃ。彼らは自分たちの手を汚さず、より高度なテクニックを用いたのじゃ。

 第287回(05月号)             BackNumberは こちら

 そこで娘婿をリーダーとするプロジェクトチームがつくった案は、正式なものではなく中間発表段階のものであるとしたのじゃ。こうなると娘婿の面目はまるつぶれとなったのは言うまでもない。それどころか、彼には能力がないというレッテルが張られることとなった。ワンマンな社長であっても顧客を相手に強い態度は取れぬのは当然じゃろう。長期的に見ればどういうことになるか?お主らもうすうす感じておると思うが、社長の年齢もあり、彼のカリスマ性が若干失う傾向になっていったのじゃ。逆に言えば、娘婿の失敗を心の底で笑っておったのは、娘婿の存在をうとましく感じていた例の若者(今は部長となっている)だった。

 第286回(04月号)             BackNumberは こちら

 というのは、娘婿は自分たちプロジェクトチームの提案は素晴らしいものと思い込んでいたのじゃ。社長は娘可愛さに客観的な判断を間違えて、娘婿と同じような評価を下していた。ところが、この提案を中小の取引先が知ったのじゃ。中小の取引先がこれをみれば、大企業中心の商いの方向転換に見える。なぜこの提案書が中小の企業に漏れ伝わったかまではワシのしるところではないが、そこにも何か謀略じみたものを感じるのはワシだけじゃろうか?中小の企業の経営者が何人か集まって社長に抗議したのじゃ。内部だけの問題なら社長の胸三寸で何とかでけるが、顧客がからむとそうはでけん。さすがの社長も困り果てたのじゃ。

 第285回(03月号)             BackNumberは こちら

 娘婿の言うとおりになるスタッフを集めるとどうなるか?お主らも想像がつくじゃろう。イエスマンの集合では決して良いアイディアが生まれるべくもない。さらにそれぞれの部門で最も忙しい者を呼ばず、暇な者を集めるとどういうことになるかも容易に想像がつくじゃろう。まさしくその通りで、暇な者=仕事のでけん者が集まってもロクな案が生まれることはあり得んのじゃ。彼らの作った顧客対策は毒にも薬にもならぬものじゃった。具体的に言えば、売り上げの大きい店舗を大切にし、小さいところはそれなりに対応するという案じゃった。まるで小学生の作文に近い。物笑いの種になった。それで終われば良かったのじゃが、これが新たな波紋を呼ぶことになる。

 第284回(02月号)             BackNumberは こちら

 プロジェクトのリーダーとなった娘婿は張り切った。ここで実績を積めば間違いなく役員に登用されることは間違いないきに。彼は自分がどんどん引っ張っていくタイプの者ではなかったので、彼の言うことを素直に聞くメンバーを集めた。こういうプロジェクトをつくるだろうと、若者たちは思うつぼに嵌った娘婿を内申あざ笑っていたのじゃ。社長は娘を通して何かアドバイスをすれば良かったのじゃが、あまり口出しをすると、娘に噛みつかれるので黙っておったようじゃ。娘は社長に似てワンマンタイプだったが、婿にぞっこんだったので、婿のすることはすべて認めておったと聞く。

 第283回(01月号)             BackNumberは こちら

 この社長の娘婿も決して仕事のでける者ではなかったが、ワンマン社長の娘婿じゃきに、さすがの若者たちも無視するわけにはいかなかった。社長も納得するやり口を考えたのじゃ。そこで対外的な仕事をさせるように仕向けたのじゃ。どういうことかおわかりじゃろうか?内部の問題とかトラブルならどうでも対応でける。しっかし、対外的な問題となるとそうはいかない。お客さんを強いファンにするための部門を設け、その責任者にしたのじゃ。売り上げが増えれば当然彼の位置づけは上がる。逆に下がるとか、顧客とのトラブルが生じて、もめることが頻繁に起こると大変なことになる。彼らは後者を期待したのじゃ。まっこと悪知恵じゃのう。

 第282回(12月号)             BackNumberは こちら

 話を聞くだけでも分かるように、専務の息子がリーダーとなったプロジェクトは予想通り成果を上げることはでけんかったのじゃ。若者たちの狙い通りの結果であった。これをきっかけに専務の息子の発言権は落ちて行った。というよりもともと存在感のない男であったのじゃが、それがさらに拡大認識されることになった。これで息子の役員への道は完全に閉ざされることになったのじゃ。若者たち-若者と言っても40歳を過ぎおって今では部長になっておったが-はこうしてライバルを1人1人消すという策をめぐらしていったのじゃ。次に彼らのターゲットになったのは社長の娘婿であった。

 第282回(11月号)             BackNumberは こちら

 どういうことか?それはプロジェクトの構成要員がそれぞれの部門で最も忙しい者を選ぶことが重要なのじゃ。ところが、ある程度時間の余裕のある者を選んだのじゃ。ある程度時間が取れる者といえば聞こえは良いが、結局はその部門で重要な役割を果たしていない者のことなのじゃ。厳しい表現をすれば仕事があまりでけん者の集まりになっておったのじゃ。リーダーが優秀でない上にスタッフが優秀でなければいい結果がでるわけがない。今では部長になっておった例の若者たちは、まさにそれを狙っていたのじゃ。プロジェクトという美名のもとに、専務の息子の失脚を図っておったのじゃ。まっこと企業内の競争はすざましいのう。

 第281回(10月号)             BackNumberは こちら

 「新しい商品の開発」と言葉では簡単に言えるが、実際容易ではない。売れ筋になる商品の開発が簡単にできるなら、どの企業でも倒産することはなく、どんどん拡大することになる。いろいろな事情があってのう、業種を特定でけるのを避けるために言えぬことがあるが、普段生活の中で使う商品とだけ言っておこうかの。専務の息子は張り切って、プロジェクトのリーダーとして勤めを果たそうとしたが、誰一人まともなアイディアを出せる者がいなかった。もちろん、彼自身も良いアイディアを出せなかったのじゃ。プロジェクトチームを組んで成功するためには重要な条件がある。その条件を満たしてなかったことが大きな原因の1つとなった。

 第280回(09月号)             BackNumberは こちら

 彼らは専務の息子に新たな商品開発のプロジェクトのチーフを任せるように社長に進言したのじゃ。新しい商品の開発など彼には荷が重いことは明白であったが、社長はそれを承知のうえで任命した。なぜなら専務自身も大した能力がなく、まるでぬれ落ち葉のごとく社長に付いていくだけだったからなのじゃ。いずれの日か専務も切らなければ、若い人たちへの示しがつかないと考えておったようじゃ。そのため渡りに船とばかりにその話に乗ったのじゃ。まっこと企業の人間関係は恐るべきじゃのう。しっかし、その任務を受けた専務の息子は社長の思惑を理解せず、己が高い評価を受けていると勘違いしたようじゃった。

 第279回(08月号)             BackNumberは こちら

 彼らは古い役員の追い落としを図りながら、一方では次に役員に取り立てられるであろう、現役員の息子たちの追い落としを図ったのじゃ。現役員は創業者たちであったきに、大株主でもあった。そのため己の子息を役員にしたがっておったのも事実じゃ。会長の娘婿を追い込んで自信をつけた彼らは、次のターゲットを専務の息子に向けた。専務の息子は人柄はまっこと良かったのじゃが、仕事に関しては可もなく不可もないレベルじゃった。役員でない部長にまで昇進しておったが、特に失敗はない代わりに、特別に実績を残してもいなかった。ワシは彼をどうやって追い落とすのかを見ておったが、実に巧妙な手を使った。それは来月に話そう。

 第278回(07月号)             BackNumberは こちら

 まさに彼らの戦略は当たったというべきじゃろう。古い体質を厳しく批判し、近代的な経営を求めるという、企業としては当然の要求じゃったからのう。確かに彼らは己の栄達だけでなく、企業としての発展を願っていたのも事実じゃとワシは信じておる。ただ、彼らのターゲットは古い体質を持って居る、古い役員、部長に向けられて、絶対的な権力を持っている社長への批判は聞いたことがない。社長であっても間違いはあるじゃろうが、決して彼らはそれを口にしなかったのじゃ。だから、彼らの口にする近代化は、ある面では方便に過ぎないという見方もできるじゃろう。

 第277回(06月号)             BackNumberは こちら

 彼らのやり方は間違ってはいなかったようじゃ。徐々にその効果というか結果がついてきたのじゃ。彼らは確実にその地位を上げて行った。そうすると周りにには人は集まって来る。その中には当然人材もいる。彼らの子分になった者たちは、彼らの意を解し、彼らが期待する以上に彼らに組し忠誠を誓うものすら出てきたのじゃ。まさに思うつぼじゃのう。2人の若者-すでに50代に入っていたのじゃが-そのリーダーAはカリスマ性を持って居った。彼を支えておったBはその人柄がウリであった。AとBは切り離せない関係で、二人の力が支え合ったおったことで和が広まったとワシはにらんでおる。

 第276回(05月号)             BackNumberは こちら

 そこで彼らは労働組合に、娘婿のあることないことを吹き込んだ。御用組合であるだけに、彼らの意図をおもんぱかった組合の幹部は、娘婿の仕事ぶりを厳しくチェックしたのじゃ。どんな人間でも間違いや失敗はあるものじゃきに、それを指摘し、娘婿の出世の道を絶ったのじゃ。確かにワシから見ても、それほど仕事のでけるものではなかった。むしろ、融通の利かない小役人のようじゃった。彼にとって会長の期待は逆に重荷になっておったのではないかと、ワシはにらんでおる。こうやってのかつての若者たちは野心だけはますます大きくなり、一歩一歩階段を登って行こうとしたのじゃ。

 第275回(04月号)             BackNumberは こちら

 すでに中年となっておった彼らにとって、筆頭株主である会長の娘婿が実権を握ることを恐れた。お主らも知っておると思うが、株式会社の実権を握るためには過半数の株主の支持が必要で、彼らがそっぽを向くと実権は握れぬ。10年ほど前、ある企業の実の父と娘が、まさしく血肉の戦いをしたことがあった。会社の役員にとっては、過半数の株主の声はまさしく「神の声」なのじゃ。さて、部長になっておった彼らが考えたのは、労働組合を上手く利用することじゃった。その会社には、労働組合はあっても御用組合のじゃった。組合の幹部は組合を利用して、出世をもくろんでいる者が多かったとワシはみていた。本当のところはわからんがのう。

 第274回(03月号)             BackNumberは こちら

 若者もすでに若者とは言えない年齢に差し掛かっておった。50前というところじゃったと記憶しておる。彼らは社長に失脚を利用しながら、新しい社長へステップを移しておったが、元社長も会長として一定の権力を有しておった。それは当然じゃろう、彼は社長を退いたとはいっても、筆頭株主であったのじゃきに…。しっかし、部長にまで昇進しておった彼らは次の策を打ち出したのじゃ。どういうことか?それはのう、会社に入っておった元社長の息子が、元社長に変わって権力を握ることを排除しようとしたのじゃ。大株主でない若者たちは、そういう面では常に綱渡りの策略を練らなければならなかったのじゃ。

 第273回(02月号)             BackNumberは こちら

 おそらく常務は機会を窺っていたのじゃろう。権力者というのは、力で押さえれば必ず押さえられるという思い込みがある。己が年をとって周りの状況が少しずつ変化していくというのをなかなか受け入れられんものなのじゃ。ましてや特別な能力もなく、彼についてきただけの役員が、彼を裏切るなどとは想像の外であった。彼には腸の(はらわたの)煮えくり返る出来事じゃったろう。じゃが、時すでに遅しで、役員会での決定はいかんともしがたい。社長に可愛がられておった若者はステップを少しずつ常務に移しておったので、大きな痛手はなかった。むしろ、以前の社長とは明らかにカリスマ性のない、新しい社長に取り入りながら、さらなるステップアップを目指したのじゃ。

 第272回(01月号)             BackNumberは こちら

 というのは会社の大きな投資をせざるを得ない転換期がきておったのじゃ。社長は己の思いつくままに記者会見をやった。その内容は役員会の承認を得ていなかった。しっかし、ワンマン社長は今までと同じような感覚で己の主張をしたのじゃ。今までだったら何の問題もなかったのじゃが、常務がこれに噛みついた。今までの間隔ではあり得ないできごとじゃった。おそらく常務は社長のミスを狙っていたのじゃろう。社長は突っぱねようとしたのじゃが、いずれ常務の時代が来ると感じておった何人かの役員が常務に味方した。社長からみれば飼い犬に噛まれたようだったろう。さすがのワンマン社長も引責し、会長にならざるを得なかった。

 第271回(12月号)             BackNumberは こちら

 若者たちは当初疑心暗鬼になっておったと聞いている。じゃが、どう見ても社長は長くはない。しっかし、社長が生きておる限りその権力を離すつもりもないと感じておった。彼らは悩んでおったが、ステップを常務の方にも2割がたかけていたようじゃ。本音の所は一気に自分たちの時代にしたいと思って居ったと思う。じゃが、それは夢のまた夢であることも分かっておった。うまく立ち回りながら、社長から常務への時代の流れを上手く読み取り、逆にそれを利用しながら己の立場をさらに良くするためにどう振る舞えば良いかを模索しておった。その機会はそれほど遠くない時期にやってきた。

 第270回(11月号)             BackNumberは こちら

 まさしく古だぬきの社長であった。若手とベテランを見事に手玉に取ったのじゃ。若者たちも商品知識を身につけなければ、ベテランに勝てないことを知ったのじゃ。さらに商いの仕方も学んだ。もともとやる気のある者たちゆえに、それらの吸収は早かった。ベテランに比しても見劣りのせぬレベルに達しつつあった。それを見込んだ常務が彼らに声をかけたのじゃ。声をかけるとはどういうことか?若いお主らには理解できぬと思うが、常務の系列、端的に言えば子分にするように仕向けたのじゃ。社長は力があってもいつまでも生きられる訳ではない。次の社長は常務であろうと社内において一致した見方であった。

 第269回(10月号)             BackNumberは こちら

 古い部長連中は若者たちに負けぬほどのパワーを見せ始めたのじゃ。今まで若者のグループにバカにされし続けてきた者たちの反撃が始まったというべきじゃろうのう。元々商品知識は若者など到底及ばなかったのじゃから、その知識を生かした仕入れ、営業はお手の物じゃった。若者はマーケッティングなどと知ったらしげに語っても、実際仕入れ、販売となると仕入れ先、得意先の担当者の方が上の場合はとても太刀打ちできるものではなかった。よく言えば知識先行、悪く言えば現実を知らぬ頭でっかち、机上の空論とでも言ったらえんじゃろうか?企業は社長の人事で良い展開になっていったのじゃ。

 第268回(09月号)             BackNumberは こちら

 若者たちの間では、彼らのリーダーが役員に取り立てられるのを期待した。役員ポストが空くわけじゃきに、いきなり専務はあり得んことじゃが、何人かの古い部長連中を一気に抜き去ることを期待しとったのじゃ。そうすることによって、リーダーに連なる者が取り立ててもらえるとの思惑があったのじゃろう。じゃが、そうは問屋が卸さなかった。社長は様子を見ながら、ベテランの営業部長を役員に取り立てたのじゃ。昔からの社員も頑張れという無言のメッセージじゃったとワシはにらんで居る。その効果は絶大じゃった。古い部長連中が一気にやる気を見せ始めたのじゃ。さすがに古だぬきじゃのう。

 第267回(08月号)             BackNumberは こちら

 面白おかしく専務親子をあざ笑う者がおるのは悲しいことじゃとワシは感じておった。専務を快く思わぬ者がおってもそれは当然じゃが、人を人と思わぬ風潮はそれが蔓延すれば、企業風土が壊れる。ワシの杞憂であれば良かったのじゃが、それからずっと後になって、彼らに周り回って帰ってきたという。さて、追い込まれた専務は退職することを選択した。息子は関係なかったが、さすがに居ずらくなったのじゃろう、彼もまた退職したのじゃ。1つ専務のポストが空いたが、社長はすぐにはその後すぐにはポストを空席にしておった。自分への忠誠心を見ながら人事を決めるつもりだったのじゃろう。狸じゃのう。

 第266回(07月号)             BackNumberは こちら

 給与関係の仕事をしておる者の中には口の軽いのがおってのう、専務の給与とか賞与の金額などをぺらぺらしゃべって回ったようじゃ。企業の中で浸透させねばならぬことはなかなか浸透せぬものじゃが、こういううわさ話の類は一気に広まるものなのじゃ。本当はそういう企業内の秘密をしゃべる者は処罰せねばならんのじゃが、それを口にするものはいなかったと聞く。従業員の中には、専務と専務の息子の悪口を言い合っては楽しんでいる者もいたようじゃ。確かに現在の仕事ぶりは給与に見合うものではなかったが、それなりに企業に貢献した者に対する尊敬など微塵もない者が多かった。いや、むしろ皆無の雰囲気じゃった。

 第265回(06月号)             BackNumberは こちら

 専務は彼の息子の出来が悪かったことで、さらに立場を悪くしたのじゃ。息子自身は人柄は決して悪くはなかった。しかし、仕事は決してできる方ではなかったのが若者たちの標的-専務の息子だから課長になれた-になったのじゃ。批判しておる若者たちの中にも同じようなレベルで出世も同じような者もいたが、それには目をつぶって専務の息子ばかりを攻め立てたのじゃ。そういう点で言えば専務の息子は、割を食ったと言えるじゃろう。専務はどんどん居場所を失っていった。じゃが簡単には辞表を書くことはなかった。それも当然じゃろう、彼らの批判を受け流せば、中の1万円札で封筒が立つほどの賞与もあったからのう。

 第264回(05月号)             BackNumberは こちら

 ワシとてそれほど専務の若い時を知っているわけではない。じゃが、ワシが小耳にはさんだ話によれば、仕入れ先に行って、思い通りの値段にならん時はテーブルの上の商品を、そこいらじゅうにぶち投げたとも聞いておる。今時そういう行為をすれば社会問題になるであろうが、その当時はまだまだ社会的に成熟してなかった時代じゃきに許されておったのじゃろう。その話はさておき、専務は企業の中で居場所がどんどんなくなったのじゃ。それも時代の流れというのかのう。専務は息子を自分の代わりに入れたが、その息子もパッとしなかった。課長までは上げてもらったと聞いたが、その後は飼い殺しのようじゃった。

 第263回(04月号)             BackNumberは こちら

 Aはそれによって多くの支持を得たのじゃ。特に若い社員には大うけしたと聞いておる。若い社員はその専務が若いときにどれだけの働きをしたかをまったく知らんでのう、今の状況だけを見ているきに…。無能なようであっても、若いときにはそれなりに仕事ができていたのじゃ。単に社長についてきただけではないのは当たり前なのじゃが、企業の中で経験の少ない若者にはそれが見えなかったようじゃ。それも当然じゃろう、若者が年寄りを見て「いつか行く道」と思えないのとまったく同じことじゃ。逆に老人が若者を見て「今の若者は!」というのも全く同じじゃろう。「いつか来た道」を忘れてしまっているだけじゃろうの。

 第262回(03月号)             BackNumberは こちら

 Aはまず専務をターゲットにした。専務は2人おったのじゃが、一人の専務は会社に出勤するとすぐ、専務室にこもり新聞を読んだ。そのあとは暇に任せて低いテーブルの上に足を上げ、新聞を顔に乗せて昼寝が日課じゃった。それでいて給料は社長についで多く、ボーナスはウン百万と聞いておる。そのことは社員は知っておった。なぜなら人事部の若い社員が同僚にしゃべり、その同僚から社員全員に知れ渡っていたのじゃった。そのために多くの社員は専務に対して心の底では怒っておった。その怒りを上手く利用したAは伝説の「あなたは何も専務」という名言を吐いたのじゃ。これは瞬く間に社員全体に広がった。

 第261回(02月号)             BackNumberは こちら

 Bの存在の大きさをAは再確認することとなった。BがいなければAは企業の中で再び脚光を浴びることはなかっただろう。再び光が当たったAは古い役員たちを追い詰めていった。それは社長の「古い体質からの脱却路線」に合致しておったのじゃ。実は社長は古い役員を切りたいと感じていたようじゃったが、己を信じてついてきた者たちを切ることがでけんようじゃった。「今までありがとう、しかしもう君たちは必要ない!」とは人情として言えんじゃろう。Aに自由に吠えさせることによって、企業内に古い役員は「老害」と思わせる雰囲気を作らせるように仕向けたのじゃ。さすがに社長は古だぬきじゃのう。

 第260回(01月号)             BackNumberは こちら

 Bは人柄が良くてのう、彼を嫌いになる者はほとんど皆無じゃった。さらにBは人を裏切ることなど決してない男でもあった。また社長にも気に入られておった。その立場をうまく使って、Aと社長との間を持つだけでなく、若手の者たちの精神的な支えになったのじゃ。追い込まれていたAに落胆していた若者たちも、徐々に気持ちが立ち直っていったのじゃ。さらにAを中心とするグループが結束を固めるに連れて、社長も彼らの力を無視したのでは組織運営のダイナミックさが失われることを恐れた。社長たるものはさすがにそのあたりの眼力は半端ではないのじゃ。臥薪嘗胆ほどの苦労はなかったが、Aは少しずつ立ち直ったのじゃ。

 第259回(12月号)             BackNumberは こちら

 おごり高ぶっておったAも己の立場を身に染みて感じたようじゃった。己の力ですべてがうまくいっておると勘違いしておったのが分かったのじゃろう。彼は所詮社長の威を借りる狐に過ぎなかったのじゃ。資本主義の根本は資本じゃ。株主総会でも半数以上の株を持っておれば、思う通りの企業運営がでける。大株主ではないAは単なるサラリーマンに過ぎん。どんなに力があるように見えても、それは単なる幻に過ぎんのじゃ。それに気づいたAは愕然としたようじゃった。じゃがこれで終わらないのがAじゃ。彼の腹心の部下であるBを上手く使って、再起をかけた戦いを挑むことになる。

 第258回(11月号)             BackNumberは こちら

 さすがに社長も堪忍袋の緒が切れたのじゃろう。彼が組織検討委員会と称して己の思うままに作った組織と人事を「これは何だ!」と一喝して、ズタズタに書き直した。それだけでなく人事も白紙でやり直したのじゃ。それでも怒りが収まらないのか、Aを人事異動で本社から遠く離れた支社に飛ばしたのじゃ。まさに「驕る平家の没落」のようじゃったと聞いておる。今まで横暴なAに付いてきておった者たちも社長の逆鱗に触れることを恐れたのと、今までも心の中でAに抱いていた反発から一人ひとり去っていったのじゃ。己の力を過信すると、哀れな結果になる典型的な例になってしもうたのじゃ。

 第257回(10月号)             BackNumberは こちら

 しっかし、Aを信じ切っておった社長はどこかに不信を抱きながらも、Aを信じ切っておったのじゃ。じゃがのう、いつまでもAの横暴が通るわけではなかった。その企業より強い立場にある取引先からの苦情が入って来たのじゃ。Aは増長して企業対企業の力関係まで、己の力で何とかなるとまで勘違いをしてしまったのじゃろう。いわゆる慢心で周りの状況さえ読めなくなってしまったという訳じゃのう。ちょうどその時期にAが勝手にやった組織変更と人事異動は、さすがに社長の怒りをかったのじゃ。というのは社長を飾り物にして、実質的に己にすべての権限が持てるような組織と人事異動じゃった。

 第256回(09月号)             BackNumberは こちら

 若者A(その頃には若者と言うには、すでに45歳を過ぎていたので、中年と言った方が適切)は、一部はねじ曲げられた情報で、回復した時の戦略を練っておったのじゃ。病院まで来て、己に忠誠を尽くす部下たちの多さで、次第に調子に乗って行ったのではないかと、ワシは想像している。己の実力があれば、企業の中では何でもできると増長したのじゃろう。彼は体調を回復して現役復帰すると、矢継ぎ早に人事異動をやろうとした。当初は何も言わず黙認をしておった社長じゃったが、その自由気ままで実績を無視した人事異動のの振る舞いに、かなり疑問を持ち始めたのじゃ。

 第255回(08月号)             BackNumberは こちら

 若者Aを慕う者ばかりでなく、若者Aに取り入って出世を企む者も、仕事を終えるとそそくさと彼のマンションに行った。そこでその日あった出来事をこと細かくAに伝えたのじゃ。中には彼に気に入られようとして、あることないことを告げ口する様相を強めたと聞いておる。ワシが直接見聞したことではないきに、すべてそれが真実かどうかは不明じゃ。しっかし、Aに媚びてはないが、Aの近くにおった者と親しかった者が言っておったことじゃから、まんざらの嘘ではないと睨んでおる。Aの入院期間はそれほど長くはなかったが、彼は会社を休んでおる間にも情報はしっかり入ったおったことになる。

 第254回(07月号)             BackNumberは こちら

 若者Aはなかなかの知恵者じゃのう。己に忠誠心を示すかどうかの試金石を、彼が借りたアパート(マンション)にくるかどうかにしたのじゃ。まるで江戸時代の「踏絵」代わりにしたようじゃった。ワシに言わせれば、企業の出世はどれだけ成果を上げたかが最も重要な要素じゃと思うがのう。彼らの出発は企業の近代化じゃったが、己が企業の中で、押しも押されぬ地位を築くと、前近代化ー時代の逆戻りーを平気でやろうとしたようじゃった。彼らの叫んだ「近代化」は、己の出世のための手段に過ぎなかったかのようじゃ。まっこと企業の権力争いは魑魅魍魎の世界と言わざるを得ないのう。

 第253回(06月号)             BackNumberは こちら

 「好事魔多し」という言葉をお主らは知っておるじゃろうか?良いことはずっと続くものではない。良いことがあれば、逆に悪いことが起こるというのが世の常なのじゃ。というのもAは体調を崩してしまったのじゃ。まっこと残念なことじゃが、病気では仕方がなかった。Aは大きな病院に入院をしたのじゃが、彼はその近くにアパートを借りた。夕方そこに顔を出すのを日課にしたのじゃ。どういうことかお主にわかるじゃろうか?彼の息のかかった者は、というより彼に忠誠心を示したい者は、毎日そこに通って、彼のご機嫌取りをやったのじゃ。毎日そこに通う者同志が団結を深める効果もあったようではないかと、ワシは睨んでおる。

 第252回(05月号)             BackNumberは こちら

 実際問題として、彼らの戦力は見事に功を制したといえるじゃろう。若者のリーダーのAは役員に取り立てられたのじゃ。企業の若返りという大義名分じゃったと聞いておる。それを目の当たりにした、ヒラメ社員はAのグループに入りたがる者が一気に増えたのじゃ。天下分け目の関ヶ原の戦いの前後の状況に似たようなものじゃ。まっこと、魑魅魍魎の世界じゃのう。ワシのような世捨て人にはまったく理解でけん。これを境に若者たちのグループは企業の中で、最も有力かつ勢いのある派閥となったのじゃ。戦いの中では常に勝者が正義となる。つまりじゃ、Aのグループが正義となったターニングポイントといえるじゃろう。

 第251回(04月号)             BackNumberは こちら

 じゃがのう、彼らは徐々に彼らの息のかかった若者を登用していった。その影響はまるでボディブローのように効いたのじゃ。それも当然じゃろう、彼らについていけば出世街道に乗ることができるのじゃきに…。社長と次期社長になるであろう権力者を味方につけておるのは、鬼に金棒といえるじゃろう。まっこと、彼らの戦略は見事という他はない。古い役員を追い出しにかかった彼らは、まるで年をとって仕事ができなくなった職人を切り捨てるように追い込んでいったのじゃ。古い役員が退職するということは、何を意味するかがわかるじゃろう。彼らが役員になる可能性が増すということじゃ。

 第250回(03月号)             BackNumberは こちら

 実はのう、それだけではなかった。もっと高等戦術を彼らは使っていたのじゃ。社長とそりが合わない常務役員もおった。社長に直接刃向うことはなかったが、彼は虎視眈々と社長のイスを狙っておったのじゃ。それは社長も知ってった。その役員も抱き込んで、若者たちは自分たちの出世を目指していたのじゃ。次期社長を狙う常務をも味方につけておったのじゃから、彼らは自分たちの目指す布石を、想像以上の易しさで打つことができる環境が整ったのじゃ。しっかし、余りにも露骨にそれをやり過ぎて、「君は君たちのグループの者だけを取り立てていないか?」と常務に指摘されることもあったときいておる。

 第249回(02月号)             BackNumberは こちら

 つまりじゃ、彼らの目指す近代化は、企業の目指さなければならない必然性がある。しっかし、それを大義名分にしながら、その真の狙いは決してそれだけではない。企業の中で確固たる地位を築くことも、大きな狙い、目的であった。じゃが、決して彼らを責めるわけにはいかんじゃろう。企業に入る者は、すべからくその中での出世を目指すのが当然じゃきに…。彼らは一部の古い部長と手を組むことによって、敵を減らし、味方を増やすという一石二鳥の手を打った。これは見事に当たった。人事権を半分手に入れた彼らは、自分たちの考え方に賛同する者たちを徐々に引き上げをはかったのじゃ。

 第248回(01月号)             BackNumberは こちら

 その狙いは当たったのじゃ。虎視眈々と狙っていた人事課長のイスを射止めると、華々しさを抑えて、静かに彼らのお気に入りの若者たちを引き上げようとしたのじゃ。あからさまにそれをやると、いくら社長のお気に入りだとはいえども、企業の論理にあがらうことになるきに。彼らとしてもそれは本意ではない。なぜなら、彼らの寄って立つ基本は、企業の近代化で、感覚で行う企業運営でなく、経営理論に基づいたそれを求めていたからである。つまりじゃ、企業近代化を目的としながら、人事権を握って己の思想の実現は、手段と目的が矛盾することになるっておったのじゃ。

 第247回(12月号)             BackNumberは こちら

 若者たちにとっても、それはマイナスの影響だけではなかった。古い部長の一部が彼らと対立するだけでなく、協調する姿勢を見せたことで、会社全体に若者たちを排除しようという雰囲気が消えていったのじゃ。つまりじゃ、お互いの利害が一致したということになる。ここから彼らの快進撃が始まった。ますます社長のお気に入りになった若者は、(若者と言っても、当時すでに40歳を越えていたが)、確実に企業内での地歩を固めていったのじゃ。彼らが目指したのは企業内での人事権じゃった。人事さえ握れば、いずれ多くの社員たちが彼らになびいてくる、と読んでいたのじゃ。

 第246回(11月号)             BackNumberは こちら

 企業においては、創業者で役員になっておる者に、逆らう従業員はおらんものじゃ。そのため、どの役員も言うてはなんじゃが、どれも裸の王様のなっておった。ただ、怖いのは社長だけじゃった。それが社長の意を汲んだ若者のターゲットになったのじゃから、社員を舐めておった彼らも、内心ビビりあげていたようじゃ。何とかそれを逃れようともがいた役員もおったが、所詮無駄な抵抗であった。一人、そして一人、役員は引退していった。その穴を埋めたのが、古い部長であった。若者と対立していた古い部長たちであったが、一部の部長は若者と手を組んでいた。さすがにしたたかに生き残りをしておったのじゃ。

 第245回(10月号)             BackNumberは こちら

 例えは悪いが3人はまるで獲物を求めて群れる禿鷹のようであった。その勢力はもう止められない勢いにまでなっていった。社長に異を唱えることなくただただついて来ただけの能力のない役員たちも、若者たちのターゲットになった。その中でも権力だけで、何の脳のない専務を狙い撃ちしたのじゃ。実を言うと社長もそれを望んでいたようじゃ。しっかし、今まで黙って己について来た者を、まるでビールの栓のようには捨てられぬ。そこで、若者たちが忖度するように仕向けたのではとワシは睨んでおる。一人の専務が追いやられると、常務もその他の平取締役も首の辺りが寒くなっていったのじゃ。

 第244回(09月号)             BackNumberは こちら

 少しずつではあるが、確実に若者の方が優勢になったのじゃ。そうするとどうなるかは明確での。若者の周りに人が集まって行くようになった。つまりじゃ、平目のように上ばかりを気にする者たちが、若者のグループに集まってきた。こうなると、古い部長たちの中にも、若者に媚びを売る者もでてくる。企業で一つの流れが生まれると、それはどんどん勢いを増してくる。若者AとBが中心であったグループに若者Cも加わり、3人が中心的なメンバーになった。Cは頭そのものは切れる方ではなかったが、人を丸め込むテクニックには長けておった。そのためますますそのグループの力は大きくなったのじゃ。

 第243回(08月号)             BackNumberは こちら

 じゃが、結局のとこと社長のお気に入りの方へと傾くのは企業の鉄則じゃ。それが正しいとか間違っているとかの判断は二の次になる。企業にとって社長は絶対的存在で、かなり変則的な企業でない限り、社長が「右」といえば「右」が正義なのじゃ。それに異を唱える者は当該企業にはおれなくるのが世の常じゃ。批判受けることを承知で言えば、その企業の優秀な若者と、その企業で通用せぬ者は会社を去る傾向にある。なぜなら優秀な者はその企業に自ら見切りをつけ、通用せぬ者は企業から三行半の憂き目をうけることになるからじゃ。じゃきに、企業は中間の者が残る傾向にあるといえる。まっこと企業というのは不思議なものじゃのう。

 第203回(07月号)             BackNumberは こちら

 この戦いはどちらが一方的に勝つという結果にはならなかった。それも当然じゃろう。原則論で言えば、販売と仕入れは表裏一体で、良く例えられるように車の両輪のようなものじゃ。一方がどんなに優れておっても、車はスムーズには動かぬからのう。若者達の主張と、古い部長たちの主張は平行線をたどるだけじゃった。どちらも己の主張の正しさを述べるが、結局のところ、主張すればするほど、企業が片肺飛行になるようなものじゃ。組織担当の常務はどちらにも軍配をあげなかったのじゃ。ワシはそれは正しい判断じゃったと思っておる。大局的に見れば片方に正義があるわけはないからのう。

 第202回(06月号)             BackNumberは こちら

 仕入れ担当に古い部長連中が多く、若い者は販売担当に多かった。若者は販売優先の組織を主張し、古い部長連中は、今まで通りに仕入れをメインに据えた組織を主張した。彼らの頭の中には組織云々よりも、その組織において誰がその地位に就くかをお互いに分かっておった。そのためより自分たちの地位が有利になる組織を主張しておったのじゃ。傍から見ておったワシにはそれがミエミエじゃったが、組織担当の役員にそれが分かっておったかどうか、それはワシの理解の及ばぬところじゃ。しっかし、はっきりしておることは、組織変更に名を借りた権力闘争であったことはまちがいない。

 第201回(05月号)             BackNumberは こちら

 この長い闘いの大きな転換のきっかけになったのが、組織変更だったとワシは睨んでおる。何年かに1度は組織変更を行う会社じゃった。組織変更がたびたび行われたり、むやみやたらに会議が多い企業は、腰の据わらない人間と同じで、ワシは決して良い企業とは思わんが、その会社はそれがいずれも多かった。むしろ、担当役員が己の存在意義を社内外に見せつけるためにやっていたのではないかとさえ思っておる。さて、この会社の日常的とさえ思える組織変更の会議で、古い部長連中と若者との激しいやり取りがあったと聞いておる。大義名分は組織変更じゃが、組織変更に伴う人事が組織から明らかに見えておったようじゃ。

 第200回(04月号)             BackNumberは こちら

 古い部長連中は、社長以外の役員を抱き込んで何とか挽回をはかろうと試みた。じゃがのう、多くの社員が納得する手は見つからなかった。相変わらず「今まではこうだった」を繰り返すばかりであった。前にも言っておるように、若者たちも新しい理屈は知っておったが、それで売り上げが増えるわけではない。大学卒が少ない時代だったので、「何となく凄い!」と思われていた時代の背景の中で、若者たちは「エラそう」に振舞うことができたのかもしれん。ワシはのう、この時代の背景が若者たちを有利に進めたのではないかとにらんでおる。若者たちと古い部長連中との確執は長く続いた。

 第199回(03月号)             BackNumberは こちら

 さすがに社長は従業員どころか、他の役員が束になってかかっても勝てない程にその勘がさえておった。若者たちはその社長を支える素振りを見せながら、階段を上がろうと考えておったように思う。これはワシの思い込みかもしれんが、ずっと後になってからいろんなことが判明した。しっかし、そのことはまたの機会に譲ることにしておく。彼らは社長を心から尊敬する態度をしめしながら、古い部長をやり玉にあげようとしたのじゃ。古い部長連中は、過去の成功例にしがみついて、一歩もそこから出ようとしなかったきに…。じゃが、考えてみれば、それも仕方のないことかもしれん。それにしか頼れる物はないきに…。

 第198回(02月号)             BackNumberは こちら

 物事は単純に考えればわかることじゃ。テニス理論を学んだ者がテニスが上手くなることはない。走ることでもそうじゃ。歩幅を大きくして回転数を上げれば早くなるなど誰でもわかる。それがでけるかどうかが問題なのじゃ。会社を大きくする者は理論を学ぶことも重要じゃが、実戦でそれを生かせる才能が大切なのじゃ。何事でもそうであるように、素質は最も大きな要因になるとワシは考えておる。これを言えばせんなきことじゃが、どうしようもない事実なのじゃ。ワシが血を吐くほど頑張っても、100m走でオリンピックで金メダルを取れないのが明確であるのとまったく同じことなのじゃ。

 第197回(01月号)             BackNumberは こちら

 それは社長が最も良く知っておった。社長は大学を出てはいなかったが、会社をその嗅覚で大きくしていったのじゃ。じゃがのう、決して経営理論を学ばなかったわけではない。彼はむしろ、そんじょそこらの大卒よりはるかに勉強していたのじゃ。経営に関する本を読むだけでなく、経営コンサルタントもついておった。日本でも有名な方じゃったと聞いておる。若者たちが一定以上の大学を卒業しておっても、社長の勉強量にははるかに及ばなかったと、ワシは踏んでいる。さらに経営者としての嗅覚は才能じゃろう。どんなに経営理論を学んでも、己の会社の現況において最も良い経営の方向はどこにも書いておらんきに…。

 第196回(12月号)             BackNumberは こちら

 じゃがのう、新しいマーケッティングを知っていようと、実際の売り上げにそれほど役立つわけではない。あの有名な話を知っておるじゃろうか?パナソニック(当時は松下電器という名称じゃった)に新入社員が入り、経営の神様の松下幸之助社長に滔々とマーケッティング理論を語った。すると経営の神様は「あんじょう商いをすることでんな」と語ったという。本当のことかガセの話かは知らぬ。しっかし、経営の本質を表しておる。つまりじゃ、理屈をいくら並べても商いには役に立たぬということじゃ。若者と対峙しておった古い部長連中の力がなければ、商いはうまく行かぬということじゃ。若者と古い部長連中とのバトルは簡単に決着がつくものではなかったのじゃ。

 第195回(11月号)             BackNumberは こちら

 ここから彼らの反撃が始まったのじゃ。今までずっといじめられておったのじゃから、そのパワーは以前以上であった。怒りもそれにあったきに…。古い部長連中に対する接し方は、はたから見ておったワシの目にも異常じゃった。古い連中が数値目標達成しなかったときだけでなく、ミスでもしようものなら徹底的に彼らを攻撃した。元々新しい戦力とかマーケッティングなど知らず、今までの勘と経験だけで生きてきた彼らにとって、マーケッティング理論をまるで錦の御旗のように振りかざし、組織論をあたかも経営に不可欠な知識かのように社内に振りまく若者たちの戦略に打つ手を失っておったようじゃった。

 第194回(10月号)             BackNumberは こちら

 一人去り、二人去り…まるで歯が抜けるように、彼らから去っていく取り巻きの者たち。三人の近くにいた者の中には「このグループには愛がない」と嘆く者もいたのじゃ。臥薪嘗胆とまでは行かないが、辛い思いをしながら、社長が何とかしてくれることを願っておった。そうじゃのう、確か3年ほど過ぎた頃に、社長が思いついたように人事異動を言い始めた。それまでは人事はすべて常務に任せておったのじゃが、常務が彼らに対して何の手も打たないことにしびれを切らしたのじゃろう。何となくその雰囲気を感じた常務は、社長が口を挟んで、すべての権限を取り上げられるのを恐れて、彼らを再び日の当たるポストにつけたのじゃ。

 第193回(09月号)             BackNumberは こちら

 ここから若ものたちの苦しい時期が始まったのじゃ。古手の部長たちは、自分たちの春が再びやってきたかのように振舞った。それに対して、若者たちのグループは、その多くの者たちが去って行った。しかし、A,B、Cの三人の団結は強かったのじゃ。周りから後ろ指を指されても、彼らは決してひるむことはなかった。むしろ、団結を誇り捲土重来を期したのじゃ。彼らの心の奥底には錦の御旗-つまり社長が付いているという安心感があったのじゃ。それが見抜けぬ古手の部長たちの方が、ワシなどから見ると、むしろ大ばか者に写ったのじゃがのう…。しっかし、表面上は苦節の時期であったことは間違いのない事実じゃきに…。

 第192回(08月号)             BackNumberは こちら

 手始めの改革ではあったが、その奥にある狙いを知った古手の部長たちは、役員と手を組み、社長の狙いをつぶしにかかったのじゃ。しっかし、社長を相手に勝てるわけはないのは、彼らも先刻ご承知でのう。彼らは若者をターゲットにしたのじゃ。曰く、「彼はまだまだ分かってない」。曰く「彼には商品知識も、顧客も知らない」曰く、「机上の空論ばかり」。などなど、彼を徹底的にたたいたのじゃ。その若者だけでなく、彼の周りにおった者たちも、古手の部長にジワジワ責められたのじゃ。もともとパワーがある者たちは少なく、まるで馬糞の川流れのようにバラバラにされてしまったのじゃ。

 第191回(07月号)             BackNumberは こちら

 社長はそれを苦々しく思っておったのじゃ。しっかし、その体質を変えるのは簡単ではない。なぜなら、企業をともに立ち上げた役員たちの誰もが現状の企業に満足し、社長が改革をしようと試みるも、なかなかメスを入れることはでけんかったのじゃ。そのため威勢のいい若者のグループのパワーを利用して、企業体質の改革を実行し始めた。まずは組織改革であった。今までの組織では古い体質をそのまま続けられる。そのため仕入れと販売のバランスの変革をした。今までは圧倒的に仕入れが強かった。彼らの思う通りの商品の構成、メインの販売価格帯、レイアウトに至るまで決めておったきに…。

 第190回(06月号)             BackNumberは こちら

 A,Bだけより戦略家Cがついた彼らのパワーは今まで以上に波及力を増したのじゃ。企業の中で若手ではあったが、何人かの集団が生まれるとパワーバランスが変わってくる。ましてや古い体質にメスを入れたかった社長にとっては渡りに船じゃった。社長は彼らの主張する「企業の古い体質からの脱却とシステム化」の言葉を使って、企業にメスを入れようと図ったのじゃ。確かにその企業は売り上げこそ大きかったが、中で働く者たちは古い体質の持ち主で、まるで役人のように「前例主義」に固まっておった。まったく新しいことへのチャレンジに関しては、己が実行するどころか、チャレンジする者へは批判・攻撃を繰り返したのじゃ。

 第189回(05月号)             BackNumberは こちら

 2人はまるで兄弟のように仲睦まじいタッグを組んで、古い企業の体質にメスをいれるべく奮闘を重ねた。社長だけでなく、その頃、力を付けつつあった常務からも信頼され、その力の波及は以前と比べてはるかにアップした。じゃがのう、若者Aの心のどこかに「また裏切られるのではないか・」との疑念が、常につきまとっておったようじゃった。良い時は寄ってきて、悪くなれば去っていくだけでなく、悪くなると寄ってたかって叩きに来るのは世の常じゃきに…。Bと慎重に敵・味方を判断しながら進んで行った。さらに若者AにはCもついた。Cは戦略家で彼らの強い援軍となった。

 第188回(04月号)             BackNumberは こちら

 若者Aはこの間の憤りは決して忘れなかった。自分が良い時には寄ってきて、悪ければ差って言った物者たちへの怒りが、彼のカムバックへの原動力となった。それに苦しい時も決して彼から去らず、常に寄り添ってくれた若者Bと、その結びつきを強めたのじゃ。若者Bは柔らかな人柄で人徳もあり、それが彼らのグループの結びつきの接着剤になった。つまりじゃ、若者Aが完全復活を遂げられたのも、Bの支えがあったからなのじゃ。この2人を軸として、若者たちのグループが企業の中で力をつけていったのじゃ。じゃが、その根底には社長というつよ~いバックがついていたからは言うまでもない。

 第187回(03月号)             BackNumberは こちら

 若者Aは今度は以前と比べると慎重じゃった。あまり調子に乗ると周りからの反発があることを身にしみて感じたからじゃきに…。しっかし、彼の行動パターンはそんなに変わるものではない。今までとは慎重ではあったが、次第に以前の勢いを取り戻していった。するとまた、周りには利益を求めて彼に近づいてくる者も増えたのじゃ。実に悲しいことよのう、良いと思えば人はよってくる。逆に損をすると感ずれば人は去っていく。世の習いとは言っても、それをあからさまに見せつけられるとは!企業というのはまっこと恐ろしい集団のようじゃ。若者はそれをしみじみ感じたようじゃ。

 第186回(02月号)             BackNumberは こちら

 若者Aの勢いは止まった。日の出の勢いがなくなると、悲しいことじゃが周りにおった者たちも次第に去って行った。己の損得ばかりで行動していた者の正体が明確になったのじゃ。若者Aを決して見捨てぬ者もおった。ずっと彼を信じていたBじゃ。Bは変わらぬ気持ちを持ち続けておるようじゃった。なぜなら、2人の間の関係は、単なる利害の一定ではなく、企業運営を近代化させたいと願う思いだったからじゃ。Bだけでなく、他にも若者Aを信じてついていく者も少数じゃったが存在した。臥薪嘗胆の気持ちを抱いておるようじゃった。元々社長のお気に入りの若者ゆえ、部長連中の気持ちが収まるのを見計らっておった社長は、若者Aを再び日のあたるポストへ導いたのじゃ。

 第185回(01月号)             BackNumberは こちら

 若者Aを支持しておった連中も失敗した若者から少しずつ距離を取り始めた。企業には企業の論理があり、どんなにかわいがっておっても数字を出さぬ社員にはそれなりの厳しい評価をしなければならないのじゃ。それを否定すると企業の存続は危うくなる。世の中にはワンマン社長が「数字を上げない者」であっても評価し続ける人もおる。こういう企業は、他の面でも社会的正義を無視する傾向がある。つまりじゃ、社会のルールは自分自身と勘違いしておる場合が多い。早晩、そういう企業は社会的制裁を受けることになるのじゃ。この企業は悪しき傾向は若干あったが、企業の最低のルールは守っておったきに…。

 第184回(12月号)             BackNumberは こちら

 徹底的に組織変更に反対した古い体質の部長連中は、若者たちの動向に常に目を光らせていた。事あるごとに彼らを敵視し、追いつめる機会をうかがっていたのじゃ。彼が仕事の面で失敗をするのを待っておったのじゃの。若者をかわいがる社長であっても、若者が失敗すればすれを庇うわけには立場上いかんきに…。その機会がやってきた。若者が調子にのって、売り上げを伸ばそうと無理な仕入れをやったのじゃ。もちろん、無理な仕入れの結果は火を見るより明らかじゃった。売れない商品はたたき売りしかない。そうすれば利益を蝕んで散々な結果となった。この機会を生かした部長連は若者を徹底的にたたいた。

 第183回(11月号)             BackNumberは こちら

 この2人の新しい風-つまり企業の近代化-は当然の時代の流れではあったが、当時の古い体質をひきずっておった多くの先輩社員には不評じゃった。そのため若者の足を引っ張ろうと、虎視眈々の部長連中も多かったと聞いておる。ある組織変更のプロジェクトがあり、思い切った組織の変更をやろうと考えておった2人は、その第一段階として、仕入れ担当の権限の低下を狙った変更を試みようとしたが、その狙いを先輩の部長連中に見受けられ強い反対で押し切られてしもうたのじゃ。さすがに企業で長い経験を積んでおるので、その辺りの若者の思惑など見破るのは簡単なことじゃった。

 第182回(10月号)             BackNumberは こちら

 2人の若者のAとBは理想の企業の夢を語り合った。今までの古い企業の体質から脱却しなければならないことを夢見ていたようじゃった。今までの古い体質は、勘と経験にたより、係数的な捉え方を否定しておったのじゃ。それだけではない。仕入れ先との癒着もあったように聞いておる。つまり、仕入れ担当者はキックバックを前提に仕入れておったのじゃ。これでは売れ筋を仕入れるより、キックバックをしてくれる企業を中心に仕入れることになる。古い体質を抜けるのは実に困難なことであった。この2人の若者の周りには人が集まった。彼らがいずれ企業の中心となることを読んだだけでなく、彼らの主張に賛同したかれでもあったのじゃ。

 第181回(09月号)             BackNumberは こちら

 若者はまるでわが世の春のような振る舞いをするようになった。それも当然じゃろう。当初は遠慮がちのようじゃったが、次第に調子に乗るようになった。すると彼(Aと名付けよう)の周りには若者がどんどん集まるようになったのじゃ。なぜなら、次の権力者になるのは間違いがないと感じたからじゃ。その中には、彼の権力を求めるのとは違って、彼の新しい考え方に同調した者もおった。仮にその若者をBと呼ぶ。Bは人柄もよく、単に企業で出世を求めてAについたのではない。Aの考え方に共鳴したに過ぎない。その頃のAは調子に乗ることはあっても、人として特に問題はなかったようじゃ。

 第180回(08月号)             BackNumberは こちら

 何度も言うようじゃが、彼は企業の中では伝説となったのじゃきに…。普通、企業では専務と平の従業員では月とすっぽんなのじゃ。まったくそのレベルが違う。喧嘩になるなど考えられん。ましてや、平社員が専務を追い込むなど考えられん事態なのじゃ。実際は後ろにいた社長が追い込んだのじゃが、企業内では話に尾ひれがついて彼が追い込んだことになったようじゃ。その方が話としては面白いからのう。彼は社長の寵愛を受けて、まさに思いのままに動いた。社長以外の役員も、若者を恐れるようになった。なぜなら専務の例でもわかるように、社長が後ろについているきに…。

 第179回(07月号)             BackNumberは こちら

 追い込まれた専務は退職した。彼はその後意地になって別の会社を設立したようじゃ。しっかし、一度のんびりする癖が付き、刻々と変化する企業環境について行くだけの知識をもはや失っていたのじゃ。気持ちがいくらあっても、知識がなければ経営などやれるものではない。まっこと厳しい世の中じゃきに…。創業者の一人じゃったのでかなり株を持っていた。その株を売り払って企業を起こしたのじゃきにほとんどの財産を失ってしまったと聞いておる。晩年を汚した人生となってしもうたのじゃ。ここから専務を追いやった若者の快進撃が始まった。なぜなら社内外に彼の伝説が生まれたからなのじゃ

 第178回(06月号)             BackNumberは こちら

 専務は若者に追いやられた。しっかし、彼を庇うものはいなかった。昔から彼とともに苦労した役員たちの何人かが庇うと思われたが、そのそぶりさえしなかったのじゃ。追いやられる者を庇うものは、同じ仲間として追いやられるのが企業の常識ではあるが、まっこと寂しい限りであった。強い者に味方をするのが企業の掟だとはわかるが、悲しい出来事じゃった。ひたすら社長を信じてついて行った彼ではあったが、ここここに至っては社長に恨み言を言ってもせんなきことじゃった。あの暴言から1,2年後に、専務は退職を決意したようじゃった。激しい性格の男じゃったがのう、決意を固めざるを得なかったのだ。

 第177回(05月号)             BackNumberは こちら

 それによって彼は伝説の男となった。まさしく計算し尽くされたことではあったが、それを考えておらん多くの者たちは、彼を持ち上げたのじゃ。彼が特に腹が据わっていたわけではない。リスクを冒してやった行動でもない。権力を後ろに持っておるきに、でけるのじゃ。「度胸がある!」と褒め称えられることを計算していたのじゃ。お主らも彼の立場で考えると、すぐに分かるじゃろう。まっこと彼の作戦は想像以上の成果を上げた。伝説となった彼は、的を専務に絞り上げた。常務、部長など敵を増やすといくら後ろ盾があっても社長は抑えきれないからのう。専務はこのときから、どんどん追いやられる状況となったのじゃ。

 第176回(04月号)             BackNumberは こちら

 a「専務は何も専務だ!」と堂々と専務に宣言!専務は怒りに身体を震わせたが言い返すことはできなかったようじゃ。それを聞いていた者が、周りに言いふらしたのじゃろう、その噂は瞬くうちに社内外に広まった。社長の後ろ盾がなければ決して口にできない言葉であったが、何も考えてはおらなかった社員たちは、若者の伝説となったようじゃ。少しでも考える者がおれば、すぐにわかりそうなものじゃがのう。まっこと多くの者は何も考えず生きているということじゃ。まさに黄門様の印籠と同じでのう、江戸幕府がついていなければ、もうろく爺のたわごとに過ぎん印籠も権力の裏打ちがあってこそ生きているのとまったく事情は同じ。

 第175回(03月号)             BackNumberは こちら

 一定の年齢に達して、肉体的にも精神的にも頭脳の面でも衰えるのが人の定めなのじゃ。人によってその年齢は当然ながら異なる。専務はまだまだ十分に働ける年齢であったが、企業が大きくなるにつれて、自分の現状に甘んじてしまい、昔持っていた情熱を失ったのだろう。一度心の火が消えると、新たに燃やすことは困難になる。彼は封筒に入れれば、横に置かないで立つほどの役員報酬を得ていて、さらに企業も伸びておったので、その現状に安住してしまったようじゃった。彼だけがそうだったわけではない。ほとんどの役員がそうであったが、彼ほどひどくはなかったのじゃ。まさしく彼は現状に甘んじておる象徴的な存在であった。

 第174回(02月号)             BackNumberは こちら

 そして、徐々に専務・常務を追い込んで行った。それは社長にとっても望ましい傾向であった。なぜなら、昔から彼を信じてついて来た者を、まるでビールのキャップのように切って捨てるわけにはいかなかったから、若者の言動は彼らを切るのに実に都合が良かった。常務・専務が居心地が悪くなり、自ら引退してくれることを望んでいたのだ。それだけでなく若者は常に社長をヨイショしていたので、社長のカリスマ性を高めることになった。「社長はこの業界ではデキル者として有名な人だ!」と歯の浮くようなことを平気で言っておったようじゃ。まぁ、どの企業でも社長というのは「オラが大将」的な要素はあるかもしれんがのう。

 第173回(01月号)             BackNumberは こちら

 そして、徐々に専務・常務を追い込んで行った。それは社長にとっても望ましい傾向であった。なぜなら、昔から彼を信じてついて来た者を、まるでビールのキャップのように切って捨てるわけにはいかなかったから、若者の言動は彼らを切るのに実に都合が良かった。常務・専務が居心地が悪くなり、自ら引退してくれることを望んでいたのだ。それだけでなく若者は常に社長をヨイショしていたので、社長のカリスマ性を高めることになった。「社長はこの業界ではデキル者として有名な人だ!」と歯の浮くようなことを平気で言っておったようじゃ。まぁ、どの企業でも社長というのは「オラが大将」的な要素はあるかもしれんがのう。

 第172回(12月号)             BackNumberは こちら

 若者は専務であろうと常務であろうと、堂々と彼らを悪しざまに批判した。もちろん社長に気に入られるように日々振舞っていた。それだけでなく、批判するときには必ず社長のヨイショを入れていた。社内では彼の言動が評判となった。「専務を堂々と批判した」「あの常務をコテンパにとっちめた」と、日ごろ仕事をしないで高給を取る彼らに怒っていた社員に拍手喝采で受けいられた。印籠をかざし、悪代官を懲らしめる助さん、格さんのように映っていたのだろう。バックに江戸幕府がついていたように、彼には社長という強いバックがついているのじゃから、敵はいない状態であった。

 第171回(11月号)             BackNumberは こちら

 もちろん社長は細かいことまでは耳に入らなかった。しっかし、重役はどれもまともに働かず、彼におべっかを使うだけで、会社に来てはそれぞれの部屋で新聞を読むだけであったのは重々承知していた。じゃが、ここまで企業を大きく下のは若い時には彼とともに苦労をしてきた同志であった。それゆえ、社長は彼らを糾弾できなかったのじゃろう。重役たちがその立場に安住し、高給をもらって安穏と暮らしておった。つまり、何の仕事もしないが、社長の機嫌さえとっておけば安泰と踏んでいたのじゃろう、とワシは思っておる。そこへ期せずして若者Aが入社した。Aはこの状況を見抜き、社長に取り入って無能な重役の排除を考えた。

 第170回(10月号)             BackNumberは こちら

 社長たる者さすがに時代を見抜く力はあるきに…。古い体質から新しい時代への大変換が必要なことを分かっておったのじゃ。社内ではトンデモナイことも日常的に起こっておった。当時その企業は、古株の男性社員から若い女子社員に至るまで、社内は風紀も乱れておったと聞いておる。お尻を触らせたら○○円、胸なら○○円など、就業中に平気でそういう会話が飛び交い、実際に行われていたという。決して風俗の会社ではない。一般の企業じゃった。これを知れば、若い娘をその企業に就職させるのを躊躇する親御さんも、当然出てくることになる。給料も担当する重役が「君は○○円」と勝手に決めることもあったらしい。。

 第169回(09月号)             BackNumberは こちら

 元気のいい若者がある企業に入った。彼の名前を仮にAとしよう。Aはその企業の古い体質を何とか変えようと考えたようじゃ。入社してすぐにそれを考えたようじゃから鋭いきゅう覚をもったいたんじゃろう。しっかし、入社したばかりの若者にそんなことがでけるわけがない。しかも、その企業は100億を越える売り上げを誇る企業じゃ。社長以下古い体質のまま生きてきた企業じゃから、誰もがそのままで生きていけると信じて疑わなかった。そこで彼は社長に取り入った。ちょうど時期は社会が大きな変革の時代じゃった。社長もうすうす変えねばならぬと感じておったようじゃった。